令和4年度は男性育休元年とされるくらい、育休制度が大幅に改善されています。
男性育休の制度が変わったことは漠然と知っていても、いまいちイメージできていない人もいるのではないでしょうか。
今回は、育休の制度がどう変わり、男性が育休を取りやすくなったのか解説します。
改正育児・介護休業法で男性育休は取りやすくなる!?
まずは、厚生労働省が発表している法改正の概要を見てみましょう。
- 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組み『産後パパ育休』の創設 【育児・介護休業法】
- 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
- 育児休業の分割取得
- 育児休業の取得の状況の公表の義務付け
- 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
- 育児休業給付に関する所要の規定の整備 【雇用保険法】
ひとつひとつがどのような制度なのか、詳しく見てみましょう。
産後パパ育休とは?今までの男性育休とは何が違う?
令和4年10月から新たに創設されたのが、出生時育児休業(通称「産後パパ育休」)。
・休みの申請は休業に入る2週間前までに行う。(通常の育休は1か月前までの申請が必要)
・2回に分けて分割して休みの取得が可能。
・どうしても仕事を完全に休むことができない場合は、休業中の就業も可能。
これまでの育休制度では、育休に入る1か月前までに雇用先に申請が必要でしたが、産後パパ育休制度であれば、育休に入る2週間前までに申請すれば間に合います。
妻の出産が予定日から大きくズレた場合などでも、柔軟に育休に入れるようになりました。
また、育児休業とは別に、2回に分けて取得できるため、家庭の事情や仕事の都合によって柔軟に休みを取ることができます。
たとえば、以下のような産後パパ育休の取り方ができます。
・実家のサポートが得られる期間は職場に復帰。
・妻と二人で本格的に育児が必要になったら、分割した残り2週間のお休みを活用。
休業に入りたい男性を不本意に仕事に縛り付けないよう、適切な運用が求められます。
休業中の収入減に苦しむことがないのは助かりますね。
育児休業を取得しやすい雇用環境整備とは
令和4年の4月から、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付けがされています。
つまり、男性育休を取りたいけど遠慮して取れない、という労働者が発生しないよう、ちゃんと意向を確認する義務が雇用者に課されることになりました。
また、育休相談窓口の設置や、企業の育休に関する方針の周知など、企業として労働者が男性育休を取りやすい環境を整備することが求められています。
ただ、義務はあるものの、義務を守らなかった企業を罰することまではできないでしょうから、勤務している企業のモラルに委ねられる部分が大きいです。
とはいえ、国として男性育休の取得促進を法律で明記したことは大きな進歩です。
法律で義務付けられていることを履行しない企業であることが口コミで広まれば、就職希望者が集まらなくなり、ブラックな企業が淘汰されていくことも期待できます。
運用が始まってしばらくは目に見える効果は無いかもしれませんが、長期的に見れば男性育休を取得しやすい企業、休ませてくれない企業が明確になっていくでしょう。
より欲をいえば、職場復帰後の労働者にとって不利益な人事などを防止することも義務付けてほしいところです。
育児休業の分割で、仕事と家庭の都合に応じて柔軟な対応も
育児休業についても、産後パパ育休と同じく、2回に分割して取得が可能です。
なお、男性育休だけでなく、女性育休も同様に分割した育休取得が可能です。
奥さんと旦那さんが交互に育休を取るとか、どうしても参画したい仕事のプロジェクト期間だけ職場復帰するとか、家庭や仕事の都合に応じて柔軟な育休の取得が可能となります。
当然、育児休業給付金による休業補償は分割しても問題なくもらうことができます。
安心して育児に専念することができますね。
大企業には育児休業の取得の状況の公表が義務付けられた
育児休業を取得しやすい雇用環境整備とあわせて、育休の取得状況の公表も義務付けられました。
ただし、従業員数1000人以上の大きな企業だけが対象です。
公表内容は、男性の育休取得率や、育児目的の休暇取得率だそうですが、日数ベースではなく人数ベースでの取得率のようですね。
どのくらいの期間、育休を取得することができるのかについては公表義務は設けられていないようですが、今後に期待です。
(余談ですが、少し前に話題になった「カガクでネガイをカナエル会社」であるカネカの従業員は1000人以上です。)
参考リンク:「育休復帰、即転勤」で炎上、カネカ元社員と妻を直撃
雇用期間が1年未満であっても育休の取得が可能に
従来の法律では、雇用期間が1年以上の人を育児休業制度の対象としていましたが、雇用期間の縛りは撤廃されました。
これにより、就職・転職したばかりの人や雇用期間が定められている人でも、育休の取得が可能となります。
ただし、「子どもが1歳6か月までの間に雇用契約が満了することが明らか」な場合は育休の対象外です。
短期雇用契約の場合は引き続き、育休制度を活用することはできませんので注意が必要です。
まとめ
令和4年度は男性育休の取得率向上のため、大幅に国の法律や制度が見直されました。
すぐに企業がついてこれるかは別問題ですが、長期的には男性育休が進み、育児環境の改善につながることが期待できます。
万が一にも育休の取得を企業側に拒否されてしまった場合、ブラック企業の可能性があります。お勤めの企業について、お住まいの労働基準監督署に相談してみましょう。